One Doctor's Bookshelfある消化器内科医の書庫

Menu

早期胃癌の拡大内視鏡の基礎とESD適応病変について~VS classificationを中心に~

久しぶりの更新です.先週の土曜は第10回拡大内視鏡研究会でした.座長の八尾先生,特別講演の上堂先生の素晴らしいご講演を聴き,久しぶりに学術的な興味がかきたてられました!

今回のテーマでは,拡大内視鏡がなければ診断できなかった症例ということで,日本各地から症例が寄せられており非常に興味深い講演でした.

というわけで今回はもう一度胃粘膜の拡大所見に立ち返って考えてみたいと思います.

現在早期胃癌に対するESD(endoscopic submucosal dessection)は日本中に大いに普及しており,病院ごとの手技やデバイスのレベルもどんどん上がっています.
将来的には手技自体の敷居も下がり,どの病院でも当たり前のように(今日のEMRのように)できるものになっていけば良いなと考えていますが…

ESD適応病変

絶対適応病変

  • 2㎝以下,UL(-),分化型M癌

適応拡大病変

  • 大きさ不問,UL(-),分化型M癌
  • 3㎝以下,UL(+),分化型M癌
  • 2㎝≧,UL(-),未分化型M癌

となっています.

内視鏡的根治

  • 2㎝以上のものは未分化成分が2㎝を超えない
  • 3㎝以下,UL(+)は未分化成分がない
  • 3㎝以下,分化型のみSM1(500μm未満)

(胃癌取扱い規約2010より抜粋)

これらの規定はリンパ節転移の可能性に則ったものとなっており,適応拡大病変も含め転移の確率はほぼ0%となっています.

拡大内視鏡

拡大内視鏡の役割

そしてESD適応の早期胃癌の範囲診断と分化度の選定を行っていくのが,拡大内視鏡の主な役割となるわけです.

そもそも拡大内視鏡はざっくばらんにいえば…

MS(micro surface pattern)→粘膜・刷子縁の形態
MV(micro vascular pattern)→微小血管の形態

の不整から腺腫・もしくは癌を鑑別するという概念です.これが八尾先生の提唱する,VS classificationです.

病理所見との対比

病理切片を見る場合の倍率は40倍~,核異型を診断するには400倍での観察が必要です.
拡大内視鏡は70倍程度の倍率と言われており,核異型までは診断できませんが,上記のMS,MVの不整を判断することにより,胃癌もしくは腺腫の範囲診断を病理診断に近づけて考えることができるということです.

VS classification

観察はMSについてはNBI,MVについては白色光とNBIの両方が有用と考えます.

MS pattern

MSは胃底腺領域と幽門腺領域で違いがあります.
胃底腺領域ではcrypt opening patternと呼ばれる所見が見られます.これは胃底腺の開口部が点状にみられ,その周りを血管が取り囲むような所見です.

胃底腺 拡大内視鏡
(http://www.arimageka.or.jp/endoscope/bli.htmlより抜粋)
これが胃底腺領域のMSの基本パターンとなります.

次に幽門腺領域では絨毛様構造が見られ,一般にvilli構造と呼ばれています.
幽門腺 拡大内視鏡
(http://www.hattori-clinic.com/nbi.htmより抜粋)
これが幽門腺領域のMS基本パターンとなります.

萎縮が進むと,villiパターンがcrypt openingの範囲を侵食するようになっていきます.
また,腸上皮化生が進むと拡大内視鏡所見では粘膜縁が白色からLBC(light blue crests)と呼ばれる青色調の腸刷子縁を示すパターンが発現します.

胃底腺・幽門腺・腸上皮化生.これらの通常MSパターンを認識した上で,MSのirregularity(不整合)を観察します.

  • 癒合
  • 不整
  • LBCの消失,MS消失

などの観察です.
腺腫や超高分化腺癌などは,分化度が高くほとんど通常腺管のような所見であるため,MS irregularityは少ないです.逆に高分化→中分化→低分化・印環細胞と分化度が下がるにつれ,癒合傾向や不整度が増したり,MS Absentになる確率が多くなると言われています.

MV pattern

MVも胃底腺領域と幽門腺領域で違いがあります.

胃底腺領域では前述のようにcrypt openingを取り囲むようなCNP(capillary network pattern)が見られます.
これが胃底腺領域のMVの基本パターンとなります.

次に幽門腺領域ではvilliの粘膜縁の内側にloopを描く微小血管が観察されます.
これが幽門腺領域のMVの基本パターンとなります.

異型が進むと,血管の

  • 大小不同
  • 口径不整
  • loopの消失(corkscrew pattern)

などが見られます.これらMVのirregularity(不整合)を観察します.こちらも分化度が下がるにつれ,上記のMV patternが見られるようになります.
分化癌は基本的にloop形成が見られますが,未分化・印環細胞癌はcorkscrew patternやAbsentが多くみられるようになると言われています.

以上のようにMS・MVを観察することである程度の分化度を予想し,腫瘍の範囲診断をつけていきます.
はっきりとした癌・非癌の境界がわかるとき,それをDL(demarcation line)と呼びます.

観察において重要なのは,まずは周辺の正常粘膜から徐々に病変部を観察することです.炎症や萎縮が強いだけでも多少のirregularityが現れますから,周辺粘膜部と比べての相対的なirregularityが重要になってきます.

またMSの非癌粘膜との境界については最大倍率よりも中倍率程度で観察する方がわかりやすい時もありますが,基本はフルズームでの観察が適当と考えます.

以上のことを念頭に置いて,1症例1症例丁寧に観察し,ESD後も病理切片と照らし合わせて観る眼を養っていくことが重要だと考えています.

表記としては
MS(粘膜縁)
・Regular MS pattern
・Irregular MS pattern
・Absent MS pattern

MV(微小血管)
・Regular MS pattern
・Irregular MS pattern
・Absent MS pattern
の3種類があります.

まず背景粘膜(非癌部),そして病変部を表記していきます.

Absent MVの中にはWOS(white opaque substance)と呼ばれる白色透明物質が付着することによるものもあります.これは簡単に言えば腸上皮化生により,吸収能力を獲得した胃上皮が異型による脂肪吸収障害を表しているといわれており,WOSのirregularityも腫瘍範囲鑑別の一助になると考えられています.詳しくは当ブログのこちらのページにて紹介しています.

以上,VS classificationの簡単な説明でした.詳しくは八尾先生や小山先生の正書を参照ください.(八尾先生の方は絶版なんですかね…?)
自分も更なる拡大観察とESDを積み重ね,質の高い医療を提供できる医師になることを目指そうと思っています.このブログが,拡大を本格的に始める人の導入になれば幸いです.
今日はこの辺で…

胃拡大内視鏡

中古価格
¥17,899から
(2013/8/17 16:34時点)

胃の拡大内視鏡診断

新品価格
¥10,500から
(2013/8/17 16:35時点)

ESDのための胃癌術前診断

新品価格
¥7,350から
(2013/8/17 16:36時点)

Shareしていただけると励みになります!

関連する記事SIMILSR POST

コメント0 comment

コメントお待ちしています

Leave a Reply

* が付いている項目は必須項目です

*

*(will not be published)

著者Author

ryo

ryo

6年目消化器・内視鏡医師です。 日々の経験や症例を紹介しながら役に立った書籍や論文を紹介していこうと思っています。 まだまだ若輩者ですので色々とアドバイスなど頂ければありがたいです。 また私の好きな小説や趣味の世界についても紹介しようと思っていますので、こちらも気が向いたら立ち寄って下さい。

最近のコメントLATEST COMMENTS

page top