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門脈ガス血症の予後とは?~腸管壊死との関連性~

ご無沙汰しております。最近は色々とプライベートが忙しくなかなかUPできなくて申し訳ありません(^_^;)

久しぶりの本日は、この頃立て続けだった門脈ガス血症についてです。
僕の中ではかなり致命的な印象があったのですが、最近はそうでもないようですね、、

そのあたりのところを詳しく…

歴史

門脈ガス血症は1955 年にWolfe らが小児の6例を報告したのが最初.
その後1960 年にSusman とSenturiaが成人での報告を行っている.

原因

Liebman らによると

  • 腸管粘膜の損傷
  • 腸管内圧の上昇
  • ガス産生菌による敗血症
  • などが原因.必ずしもその成因に腸管壊死を伴っているわけではない.
    (Ann Surg. 1978 Mar;187(3):281-7)

Kinoshita らによると,182 例の門脈ガス血症のうち腸管壊死は全体の48.8% としており腸管壊死を伴わない病態でも門脈ガス血症は生じうる. (Arch Surg. 2001 Dec;136(12):1410-4.)

※腹腔内膿瘍・炎症性腸疾患・外傷・胆管炎・膵炎・劇症肝炎・腸管嚢胞様気腫症なども原因となる

診断

CT画像:肝被膜2cm以内に達するガス像.
画像鑑別:胆管内ガスは胆汁の流れと共に肝門部へと集まってくる.
門脈ガスは門脈血の遠心性の流れに従い肝被膜末梢まで達する.

臨床予後

従来は予後不良であるといわれてきたが
・CT の普及により早期軽症例の診断が可能となり,必ずしも死亡率は高くない.
・門脈ガス血症自体は1つの臨床画像所見であり予後不良因子ではない.死亡率は50%前後
・しかしながら,門脈ガス血症の50-70%が腸管虚血に起因.
腸管虚血を来している場合の腸管壊死は90%,死亡率は50%~85%と高いため現在でも門脈ガス血症は開腹の適応であるとの考えが強い.
・門脈ガスの分布による臨床予後の差はなし.
(日本消化器外科学会雑誌.2013;46(1):1-6)

手術適応

・kosikawaらは本邦における保存的治療報告例を検討し

  • 腹痛が軽度で腹膜刺激症状がない
  • 発熱が軽度
  • 腸管の減圧が有効である
  • 腸管気腫症があっても限局性である

などを挙げており,腸管壊死が存在しないことが保存的治療の適応であるとしている

※しかしながら高齢者が多く,腹部所見などの乏しさなどから腸管壊死の存在診断は容易ではない.

・MizukamiらによるとCTにおいて腹水とPI(pneumatosis intestinalis)所見とを組み合わせると,生存群と死亡群の2群間に有意差→手術の適応.
(日臨外会誌73(5),1049―1053,2012)

・Midogawaらは保存的治療が可能かという判断にはBE 値とCRP 値が有用であったとしている.

1,まず造影CTを施行し,SMA閉塞や腸管壊死が存在→緊急開腹手術
2,明らかな所見がない
BE値≦-3.0mmol/lもしくはCRP≧15mg/dlのいずれかに当てはまる場合
→腸管壊死(NOMIなど)の可能性が高いと判断し開腹.
3,それ以外では保存的治療も選択肢として考える.

※保存的治療を行った場合でも,腸管壊死が徐々に進行する場合があり治療開始数日間は血液生化学検査,動脈ガス検査と理学所見の厳重な観察が必要.
(日本消化器外科学会雑誌.2011;44(11):1355-1361)

以上の様な論文報告がなされていました。大規模検討というよりは,症例報告レベルが多かったです.

結論

  • 腸管虚血・壊死の判定が最も重要.その際にPIや腹水などの画像所見を参考に
  • 明らかな所見がない場合,前述の検査値や身体所見などを考慮し,開腹の有無を決定する
  • 保存的加療を選択した場合,厳重な経過観察が必要

実際の患者様でも,4人中1名死亡,1名手術→救命,2名→保存的加療という結果でした.
門脈ガスを見たときは,その評価こそが予後につながるということでしょうか.
本日はこの辺りで…

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コメント4 comments

  1. mura

    姉妹病院で大動脈弁置換術後1週間目に発症した門脈ガス血症の症例がありサイトを調べていたら先生の記事を見つけ、読ませて頂きました。端的にまとまっていて、わかりやすかったです。
    日本消化器外科学会誌13(11):1260~1270,1980年
    でも門脈ガス血症の発生機序に関する実験的研究が報告されておりました。ご一読頂ければと存じます。

  2. ryo

    コメントありがとうございます.
    これからもできるだけ頻繁に参考になる記事をupできればと思います!
    学会誌の方も読ませて頂きます.

  3. hiratomi

    門脈ガス血症については、腹部救急や、消化器外科学会で何度もとりあげられ、私は9例まとめて2回発表しました。NOMIの早期診断を血中乳酸測定が必須との結論でした。

  4. ryo

    コメントありがとうございます.NOMIだけでなく,イレウスや腸間膜動脈閉塞などの進行具合を判断するうえでも,やはり乳酸値は必須ですよね.外科や救急の先生の意見は非常に参考になります.

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ryo

ryo

6年目消化器・内視鏡医師です。 日々の経験や症例を紹介しながら役に立った書籍や論文を紹介していこうと思っています。 まだまだ若輩者ですので色々とアドバイスなど頂ければありがたいです。 また私の好きな小説や趣味の世界についても紹介しようと思っていますので、こちらも気が向いたら立ち寄って下さい。

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