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ERCP後のメシル酸ナファモスタット投与は本当に必要か?

新年あけましておめでとうございます.年末年始は忙しく,upできませんでしたので新年は精力的に記事を載せていきたいと思います.
今年も宜しくお願い致します.

さて本日はずっと気になっていたナファモスタット(以下NM)投与の必要性に関する論文が出ていたので引用させて頂きます.
非常に勉強になりました.原著の方々に深く敬意を表します.

メシル酸ナファモスタット投与によるERCP後膵炎発症率への影響と膵炎発症の危険因子
(Yamasita Y et al.Gastroenterological Endoscopy 2013;55:3527-3734より引用)

概要

  • 急性膵炎はERCP関連偶発症の中で最も頻度が高く,2-15%に発症する
  • 殆どが軽症.重症例では死亡することもあり予防対策が重要
  • 本邦では蛋白分解酵素阻害剤が広く使用されているが,NMについては十分なエビデンスがない

※検討病院でも以前はNM20mg/日を検査当日,翌日に全例投与していたが効果が不明確であったため2009.4から術前投与を中止し,検討したとのことであった.

方法

A群:術前NM投与なし.
B群:術前NM20mg/日投与あり.翌日も同様.
(ソルデム3AG500mlに各NM10mgを混注,分割投与)

※A・B群共に未処置乳頭,検査時の膵炎合併なし,胃切既往なしの250例

術後は3h,6h,翌朝に血清アミラーゼ値を計測し

  • 膵炎発症の可能性ありと判断→NM10-100mgを適宜追加投与.
  • 3h後のアミラーゼが正常上限の3倍以上→10-20mg/6hのNMを追加投与
  • その後も症状に応じて薬剤は追加投与する.

ERCP後膵炎の定義

1991年Consensus Guidelineに順じ

  • 翌日の膵性疼痛
  • 血清アミラーゼ値が正常上限の3倍以上に上昇したもの

結果

  • ERCP後膵炎率は共に4%(重症0.5%)で有意差なし
  • 高アミラーゼ血症の頻度は共に18%で有意差なし
  • A群3h後のアミラーゼ値,臨床症状からのNM追加が必要であった症例12%も有意差なし

※術前NM非投与群の88%がNM投与を必要としなかった.

✩NM20mg/日の検査前投与はERCP後膵炎の発症率に影響を与えない可能性が示唆された

ERCP後膵炎

リスクファクター

  • 女性
  • 処置時間45分以上
  • 若年者
  • ERCP後膵炎既往
  • 黄疸のない症例
  • 乳頭機能不全
  • 膵管造影の施行
  • 乳頭切開術
  • プレカット
  • 乳頭拡張術

がこれまで報告されている.

蛋白合成酵素阻害剤

また,有効性が報告されている蛋白合成酵素阻害剤としては…

  • ウリナスタチン15万単位の静注
  • メシル酸ガベキサート1g/12時間,持続投与
  • NM20mg/24時間,持続投与.50mg/6時間持続投与

症状発現と薬剤投与

  • 平均術後5hから症状発現
  • 3h後では70%が症状なし
  • 同施設の研究ではERCP後膵炎を発症した77%→3h後アミラーゼ値が正常上限の3倍以上

以上より

  • 3h後アミラーゼ3倍の症例にはNM投与が必要
  • 6h値の上昇や症状出現例にも当然投与が必要ということになる

NM薬理作用

体重50kgの場合

  • Ki値0.16mMでトリプシン阻害作用を示し,10mg/hで作用が持続可能
  • 有効血中濃度到達時間は投与後20分
  • 終了後10分で血中から消失

※現在使用されている20mg投与法では有効血中濃度に達するように投与すると持続時間が2hとなってしまいます…

考察

本研究では
ERCP高リスク群だけでの検討ではなく,膵炎発症後の他のタンパク分解酵素阻害剤を主治医の判断で追加しており,膵炎発症率自体が4%と低値であるなどの研究の制限がある.

また一方で韓国の研究ではNM20mgの術前1hからの24時間投与の有用性が報告されているという事実もあります.

以上から

  • NM術前投与は必要ない可能性が高いが,完全に有効性を否定することはできない.
  • 術後3h時点での血清アミラーゼ値が正常上限の3倍を超える例についてはNM投与が必要であり,その後の症状発現例についても同様である.
  • 薬理作用を考慮すると,上記例に対しての投与方法についても再考の余地がある.
  • 高リスク群については別途対応が必要な可能性がある.

ということが言えそうです.自分の病院でも症例集積をしてみようと思います.
本日はこのあたりで…

因みに

A群重症例
60歳代男性,PBC,膵管ガイドワイアー法で分枝膵管深部に挿入されていた.

B群重症例
50歳代女性,総胆管結石→小切開→出血ありHSEにて止血.
いずれもその後はNM200mg/日で投与し,保存的に治癒したとのことでした.


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ryo

ryo

6年目消化器・内視鏡医師です。 日々の経験や症例を紹介しながら役に立った書籍や論文を紹介していこうと思っています。 まだまだ若輩者ですので色々とアドバイスなど頂ければありがたいです。 また私の好きな小説や趣味の世界についても紹介しようと思っていますので、こちらも気が向いたら立ち寄って下さい。

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