本日は勤務先の勉強会で先輩医師が発表された内容が興味深かったのでお伝えしたいと思います.
大腸癌イレウス
頻度
全大腸癌の3.1-15.8%と言われている.
特徴
左側大腸癌の方が,便の形状や内腔の広さから発症頻度が高い.
治療
・従来,緊急手術(Hartmann手術,人工肛門造設)を行い,腸管内減圧後に二期的手術が行われてきた.
→減圧が行えれば,一期的に待機手術が可能となる.
ということになります.ここで問題になってくるのが腸管内減圧の方法です.
腸管内減圧の方法
- 経鼻的イレウス管:右側大腸癌によるイレウスの場合,減圧が可能な場合がある.
- 大腸ステント(SEMS;self-expandable metallic stent):2012年より保険収載
- 経肛門的イレウス管
※経肛門的イレウス管,大腸ステントの明確な使い分けはなく現在前向き検討が行われている.
✩病変部位によって減圧術の使い分けが必要です.
大腸ステント留置手技
さて次は,SEMSの留置手技についてです.
- 内視鏡を狭窄部まで挿入
- 狭窄部肛門側にマーキングクリップ
- 造影剤にて狭窄部位の位置,全長を確認
- 鉗子口よりガイドワイヤーを挿入し,狭窄部を通過させる
- 大腸ステントをガイドワイアーに沿って挿入
- マーカーで位置合わせを行いながらステントを展開する
- 内視鏡と造影剤でステントの位置や出血,穿孔などの合併症がないことを確認
✩以上の様な手順になっています.必ず透視で確認する必要がありますね.
大腸ステントVSイレウス管
大腸ステントの特徴
・減圧が早く,挿入後の管理が容易で食事も可能.QOLも高く長期留置が可能
・腫瘍に対してやや侵襲的,高価(¥258,000!)
成績
・手技成功率:92-94%
・臨床成功率:91%
・穿孔:3.1-3.9%
・逸脱:3.1%,海外の大規模研究では11.8%
イレウス管
・大腸ステントに比べて,減圧が遅く,管理がやや煩雑で食事は困難.挿入時QOLも低い.
成績
・手技成功率:91-92%
・臨床成功率:90.1%
・穿孔:2.9-3.8%
✩一見ステントの方が良さそうに見えます.患者さんにとってはステントが明らかに楽でしょう.医療経済や海外の逸脱例のことを考えるとイレウス管が良い様な感じがしますね.
切除不能大腸癌に対するSEMS挿入
こちらは悪性大腸狭窄に対する姑息的大腸ステント挿入術の症例集積(日本大腸肛門病学会誌;59巻1号:47-53 2006より)
94例での検討です.
成績としては
・挿入成功率:100%
・臨床的有効率:93%
・挿入期間:平均145日
・早期偶発症:穿孔2%,migration1例
・晩期偶発症:再狭窄13%,migration7%,穿孔1%
※SEMSによる直接関連死亡はなし.
✩人工肛門より非侵襲的,第一選択となりうる治療法
まとめ
・右側イレウス→経鼻イレウス管による減圧→待機手術
・イレウス管無効の右側・左側イレウス→ステントもしくは経・肛門的イレウス管挿入による減圧→待機手術
・減圧無効例→二期的手術
ということですね.全体的に患者さんのQOLに直接関わってくることなのでよくICして,相談して決定することが大事ですね.外科寄りの話かもしれませんが,内科もいつでもできるようにしておくべき手技かと思います.
今日はこのあたりで…
※画像はcolon-stent.comより
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