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進行膵癌治療の新時代到来(Gem+nab-paclitaxel)

ご無沙汰しております.この頃臨床に没頭しており,なかなかupできず申し訳ありません.
少し落ち着いてきたのでまた定期的に記事を上げていこうと思っていますのでよろしくお願いいたします.

さて今回のテーマは転移性膵癌に対する治療についてです.前回の記事でFORFIRINOXについてはご紹介しましたが,更なる新治療”Gem+nab-paclitaxel”です.
今回も大鵬薬品主催の勉強会で教えて頂いており,非常に勉強になります!各病院の発表から癌センター東病院の池田先生の講義まで非常に為になりました.書き記しておきます…

膵癌化学療法の歴史

膵癌初の化学療法であるGemが使用され始めてからはや10年以上が経過します.その間世界中で,そして日本で様々な臨床試験が実施され有効性の高い薬剤が認可されてきました.
TS-1に続き,Gem-erlotinib,2013年にはFORFIRINOX.
そして今回Gem+nab-paclitaxel(アブラキサン)というレジメンが登場しました.臨床試験では非常に良好な成績を示しています.海外第Ⅲ相試験(MPACT試験:430例ずつの比較試験)ではGem単独と比較し,nab-PTX併用群は死亡リスクを28%低下させ,無増悪生存期間は5.5ヶ月,全奏効率は23%,病勢コントロール率(SD含む)は48%でした.

膵癌治療の基礎

まずは膵癌治療の基本的なストラテジーをお示しします.
膵癌治療ストラテジー
今回のGem+nab-paclitaxelのレジメンはStageⅣの全身化学療法が必要な患者さんに対する治療です.

nab-PTX(アブラキサン)について

製剤

アブラキサン点滴静注用(100㎎)は人血清アルブミンにパクリタキセルを結合させナノ粒子化した製材です.パクリタキセルは微小管蛋白重合をい促進し,脱重合を防ぐことで抗腫瘍効果を発揮するが,水に難溶であることが弱点でした.今回アルブミンに結合させることでこれまでの溶媒であったアルコールを使用せず生理食塩水で懸濁し使用することが可能となったことが大きな変化です.

アブラキサンの特徴

1.アルコール不使用
2.ステロイドや抗ヒスタミン剤などの前投薬を必須としない
3.点滴時間は30分
4.有効性は転移性乳癌での奏効率:24%,進行・再発胃癌:28%,進行非小細胞肺癌:33%

投与方法

Gem+nab-PTX1コース
Nab-PTX:125㎎/m²を30分投与→Gem(1000㎎/m²)を30分投与し,6日間休薬
週1回投与125㎎/m²を3週間連続し,4週目を休薬とする
これを1コースとし,投与を繰り返す.

減量・休薬基準

各コース開始時の好中球・血小板に留意する必要がある.

2コース開始時(第8日目)
①好中球1000超かつ血小板7.5万以上
②好中球500-1000もしくは血小板5-7.5万→1段階減量
③好中球500未満もしくは血小板5万未満→休薬

3コース開始時(第15日目)
①を満たし第8日目の検査が①→変更なし
①を満たし第8日目の検査が②→第1日目量へ
①を満たし第8日目の検査が③→1段階減量

②を満たし第8日目の検査が①→変更なし
②を満たし第8日目の検査が②→第8日目量
②を満たし第8日目の検査が③→1段階減量

③→休薬
通常量:125㎎/m²,1段階減量100㎎/m²,2段階減量:75㎎/m²

有害事象

MPACT試験における副作用の発現率
・疲労54%,脱毛50%,悪心49%
Grade3以上の有害事象
・好中球減少症:38%
・疲労17%
・末梢性ニューロパチー17%であり,Gem単独群よりは頻度は高い結果.
※有害事象関連死は18例4%に認めています.
また先生方のお話によると肝機能障害も重篤になるケースがあるとのことで,中止基準の策定が必要とのことでした.また症例の中には重症FNで死亡に至るケースもありましたので注意が必要です.

本邦における国内第1/Ⅱ相試験(J-0107)

切除不能進行・再発膵癌患者34例に対するGem+nab-PTXの有効性・安全性についての検討について紹介します.
・全奏効率44.1%,SDを含めた病勢コントロール率は94.1%
・全生存率は3か月時:100%,6か月時:96.2%であった.
・無増悪生存期間の中央値:5.6ヶ月
・3ヶ月時:86.7%,6ヶ月:46.7%

ここからは池田先生の総論です.非常にハツラツとした先生でわかりやすい説明・スライドでした.注目部分を抜粋して紹介します.

FORFIRINOX VS Gem+nab-paclitaxel

自分の中ではFORFIRINOXは副作用が多い,PSが良くないと使えないイメージですが,諸先生方のお話ではGem+nab-paclitaxelは比較的多くの方に使用しているようでした.

ただ奏効率だけでみると(あくまでこの試験同士での比較)次のような結果だったようです.
FORFIRINOX VS  Gem nab‐PTX

有害事象

骨髄抑制

以下は池田先生のお話です.
・Grade4好中球減少にはG-CSFは必須ではない.
・FN(発熱性好中球減少症):G-CSFを使用.発熱時には抗菌薬(クラビットなど)とアセトアミノフェンの投与が必要.

末梢神経障害

・Grade1:経過観察
・Grade2:デュロキセチン(サインバルタ)を開始し,改善がなければプレガバリン(リリカ)治療は継続するが減量も検討する.
・Grade3:休薬

消化器毒性に対して

1.グラニセトロン1㎎+デカドロン6.6mg
2.パロノセトロン6mg+デカドロン6.6mg
3.デカドロン4㎎内服,Day2・3
その他:プロクロルペラジン(ノバミン)内服など

参考

nab-PTX併用時には腫瘍内のGem濃度が上昇する,いわゆる相乗効果があることもわかっています.(Gem代謝酵素のCDK低下によるものと考えられている)

FORFIRINOXとGem+nab-paclitaxelの使い分け

特徴をまとめると次のようになるようです.
FORFIRINOXとGem nab‐PTXの比較

終わりに…

十数年前,成す術がなかった進行膵癌の治療がこの数年で大きく進歩しています.病勢制御率が50%程度もあるわけですから!!
これからは様々な薬剤・レジメンが登場することが予想されます.それぞれの薬剤の特徴をよく理解し,それぞれの患者さんの特徴に見合った治療を選択することが大事ですね,その方にとっては人生を左右する治療ですから…

今日はこの辺りで…

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ryo

ryo

6年目消化器・内視鏡医師です。 日々の経験や症例を紹介しながら役に立った書籍や論文を紹介していこうと思っています。 まだまだ若輩者ですので色々とアドバイスなど頂ければありがたいです。 また私の好きな小説や趣味の世界についても紹介しようと思っていますので、こちらも気が向いたら立ち寄って下さい。

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