はじめに…
お久しぶりです.今年は新しい内視鏡センターの立ち上げに関わっており,臨床に没頭していたためなかなかupできず申し訳ありませんでした.
少し状況が落ち着いたため,2016年は頑張っていこうと思いますのでよろしくお願い致します!!
さて今日は胃底腺型胃癌について書きたいと思います.早期胃癌研究会などでは度々取り沙汰されていました.胃底腺ポリープといえば昔は”幸せポリープ”などと呼ばれていましたが,近年
その中に非常にまれですが,癌化例が紛れ込んでいる次第です.
背景粘膜の萎縮がなく,表面構造異型も乏しいため見逃されている例も多いのではないでしょうか?今日は診断のポイントを絞って書きたいと思います(日本消化器内視鏡学会誌vol.57(12),Dec.2015などより)
概要
胃癌はヘリコバクターピロリ感染が発生に大きく関与しているが,近年八尾らにより胃上部のHP非感染で萎縮のない胃底腺粘膜から発生する胃底腺型胃癌が提唱されている.
特徴としては
①比較的高齢男性の胃体上部領域に多く,萎縮のない背景粘膜に発生する.
②胃型の粘液形質を呈する
③主細胞のマーカーであるpepsinogen-Ⅰ染色が陽性である
④腫瘍が粘膜深部から発生するため腫瘍径が小さくても高頻度に粘膜下層浸潤をきたす
以上のような通常の分化型胃癌とは異なる特徴を有する.その概念が広まるにつれ発見も増えている.
内視鏡的特徴
Ueyamaら(10例報告)によると
①背景粘膜は胃底腺粘膜(陽性率:90%)
②褪色調(陽性率:70%)
③SMT様の隆起性病変(陽性率:60%)
④樹枝状の血管拡張(陽性率:50%)
Abeらの6例報告では樹枝状血管拡張は83.3%に認めており,この病変表面の血管拡張については胃底腺型胃癌ではSMTと異なり腫瘍の局在が粘膜深層であるため腫瘍の圧迫によって静脈還流鬱滞がおこると考察されている.
即ち,発赤・やや褪色調の胃底腺ポリープもしくは粘膜下腫瘍様の扁平隆起の表面に血管拡張を認めた場合には胃底腺型胃癌の可能性を念頭に置き,生検を実施すべきである.
また肉眼的には粘膜内が予想される病変も発生学的な特徴から粘膜下層浸潤の可能性も十分に考慮する必要がある.
病理組織学的所見
①低異型度の高分化腺癌が主体
②HE染色:粘膜中層や深層を中心とした異型腺管像を認めるが,粘膜表面に腫瘍露出を認めない場合が多い.
③粘膜深部発生が多く,腫瘍径が小さくても高率にSM浸潤を来たし,腫瘍径が大きくなるにつれ脈管侵襲をきたす.
④粘液形質発現は前例MUC6陽性,MUC2陰性で胃型の粘液形質
⑤Pepsinogen-1染色:腫瘍腺管にびまん性の染色像を認める
⑥P53過剰発現は僅かであり,悪性度は高くないと考えられている
などの組織学的特徴を認めます.
今日のまとめ
胃底腺型に関しては認識,意識して積極的に見つけるよう観察しなければ,僅かな違和感の場合が多いため見つからない場合が多いと考えられます.
全国的にみてもまだ症例数は多くないですが,概念の拡大とともに増えてくるでしょう.除菌後胃癌とともに,今後注目していくべき疾患の1つですね!
今日はこの辺りで…
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