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iPS細胞が作る未来~現状と将来への展望~

お久しぶりです.今週末は鹿児島での学会にいってきたのでそこで勉強した知識を中心にお話し
したいと思います.
鹿児島は黒豚が有名なんですが,今回は単独で乗り込んだため店に入るのがためらわれ,
ラーメンを食べて帰ってきました…笑

さて話をもとに戻しますが,今回はiPS細胞について中内先生による講義があったため
それを中心に,考察していきます.

山中先生がノーベル賞を獲得し,一躍有名になったiPS細胞.現在は日本を中心に,世界各国が
臨床への応用を目指し,研究を重ねているようです.
もともと全能の可能性があるとされているiPS細胞.実際どのように応用されているのでしょうか?

そもそも幹細胞

  • 全能性→ヒトという個体になることができる幹細胞.
  • 多能性→ヒトには分化できないが,その他全ての臓器に分化可能な幹細胞.
  • 組織→決められた臓器にのみ分化可能な幹細胞.

の3タイプに分けられます.

ES細胞について

iPS細胞で騒がれる前にはES細胞(胚性幹細胞)が注目を浴びていました.これは簡単に言えば
体細胞に核移植を行うことで胚を作り出し,それを誘導することで,多能性幹細胞として利用する
というものでした(治療クローニング)

しかし,ES細胞に関しては

  • 元が胚細胞であり人間になる可能性のある細胞を使うことによる生命倫理的問題
  • 現存するヒトから作り出す細胞でないという問題.
  • 適用した際の免疫反応や感染の問題.

などから,実用化は非常に難しい問題でした.試行錯誤のさなか発見されたのがiPS細胞でした.

iPS細胞について

ご存知とは思いますが,念のため説明です.
2007年,成人皮膚細胞にES細胞に発現頻度が高い遺伝子から選んだ4つの遺伝子を乗せることで
多能性幹細胞を作り出すことに成功しました.これがiPS細胞です.

iPS細胞が作る未来

画像引用:研究内容 | Shinya Yamanaka Lab

この発見は元が皮膚細胞であることからES細胞で問題となっていた,
生命倫理・ドナーの必要性・拒絶反応などの問題が解消され,
治療法開発・薬剤開発・遺伝子細胞治療などが可能となりました.

では現在どの程度まで臨床への応用研究は進んでいるのでしょうか?

先生のお話では
赤血球・血小板などは輸血ソースとして,特に血小板産生に関してはほぼ実現可能な
段階まで来ているとのことです.

また,肥満細胞作成によるアレルギー関連の研究
リンパ球などの免疫応答を利用したガン治療などへの応用も試みられているとのことです.

この中でも非常に興味深かったのは抗原特異T細胞の応用についてです.

抗原特異T細胞とは

例えば何らかの担癌患者さんがいたとすれば,その癌に対して特異的に攻撃するようなT細胞のことです.

これをiPS細胞に発現させると,不思議なことに特異性を記憶したゲノムができるようです.

そのiPS由来幹細胞から作り出されるT細胞は抗原特異性を持ち,元の細胞より若く,更に大量に生産することが可能です.
そして再移植することにより,原疾患の癌に対して特異的な免疫治療となるわけです.

これを利用することにより,遺伝子疾患の根治やキャリアからの離脱が可能になるかもしれない
ということです.

もう一つのお話は,移植臓器の生成についてです.

現在日本は移植石器時代と揶揄されるほど自国での移植を賄えていないのが現状です.
やっと脳死移植に関する改正が行われ,家族の同意で脳死臓器移植が行われるようになりましたが,
まだまだ脳死移植は浸透しているとは言えません.

加えてWHOは海外渡航による移植を原則禁止としています.これにより,移植ドナーのニーズは
今後更に増加していくと考えられます.

これまでiPSからの移植臓器への分化については臓器が立体構造を持つため,
in vivo(試験管)で作れないというのが問題でした.

ではその他の動物の体内で作成するのが可能か?という発想で研究が進められているといいます.

まずある特定の臓器を持たない個体(動物)を作り出し(ノックアウトマウス),その個体にヒト由来のiPS細胞を
入れることで,足りないスペースに特定臓器ができ,それを取り出し人間に再度移植する
というものです.これを胚盤補完法と呼ぶそうです.

かなり越えなければいけない壁が多いように思いますが,現在

  1. 膵臓のないマウスを作ることに成功.そこにES由来の膵臓を作ることに成功.
  2. マウス-ラット異種間の新膵臓作成に成功.
  3. 膵臓のないブタを作ることに成功→その精子を用いて多量のノックアウトブタを作ることも可能.
  4. そして外来種の膵臓をブタ体内で作り出すことにも成功しています.

しかしながらまだまだ問題点も多く,動物胚にヒトの機能性幹細胞を打つことに問題があることや
iPSにキメラ形成能(異種動物の細胞とキメラ化し、その状態のまま胚を正常に成長させる能力)

がないことなどが挙げられます.

しかしながら,これらの問題については克服できるとのことでした.今後のiPS細胞の研究と
臨床への応用に更なる期待を寄せつつ,今日はこのあたりで…

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ryo

ryo

6年目消化器・内視鏡医師です。 日々の経験や症例を紹介しながら役に立った書籍や論文を紹介していこうと思っています。 まだまだ若輩者ですので色々とアドバイスなど頂ければありがたいです。 また私の好きな小説や趣味の世界についても紹介しようと思っていますので、こちらも気が向いたら立ち寄って下さい。

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