消化器病学会ではこのような特別講演もありました.3日目,山下先生による講義は非常に印象的でした.
まず基本的なところから…
- ベクレル(Bq)→放射能の量
- グレイ(Gy)→放射線の吸収線量
- シーベルト(Sv)→被曝による生物学的影響の大きさ(線量当量)
と定義されています.
そして,同ベクレルの放射能が存在しても人体への影響を評価するには,線源の形状・遮蔽の評価をする必要がある.
これによって,吸収線量や線量当量が異なってくるというものでした.
我々は自然被爆をしています.体内には120 Bq/kgの放射線が存在しますし(Kなどによる),
食事でも昆布などは2000 Bq/kgもの放射線をだしているというから驚きです.
自然放射線としては年間3.8 mSvの被爆があります.
そして一般人の医療被曝は平均2.25 mSv/年です.
イランのラムサールなどでは10 mSv/年の被爆量と言いますが,癌患者が多いというわけではないようです.
因みに現在の日本では医療従事者は<50 mSv/年,<100 mSv/5年と規定されており, 一般患者さんは1 mSz/年と規定されています. 医療放射線被爆は,胸部Xpで0.05 mSv,胃透視検査で0.6 mSv,CTで5-20 mSvとのことです. そして現在UNSCEARでは,発癌リスクとなるのは,100 mSv以上の急性一回被爆と宣言しています.
これらの知識を得た上で,東日本大震災とチェルノブイリ事故とを比べてみると…
チェルノブイリでの放射性ヨウ素による甲状腺被爆は平均500 mSv以上であり,特に小児の癌発症リスクは
急激に増加したと考えられます.
外部内部被爆にかかわらず,線量依存性なのです.
一方,福島では1 mSv以下がほとんどであり,最大でも35 mSvであったといいます.
チェルノブイリと比べれば一目瞭然です.
さらに環境汚染として
セシウムの外部被爆は5 mSv以下,内部被爆(食事など)は0.2 mSv以下の値で留まったとのことです.
総じて,情報の錯綜により周辺住民の恐怖を煽ったこと・それが故に外部被爆を最小限に抑えられた結果となったようです.
しかしながら,原発周辺の環境汚染は非常に深刻です
そして甲状腺被爆に恐れる人達は今も苦しんでいます.
そうした中,福島県立医大を中心として膨大な数の甲状腺スクリーニングが行われているそうです.
一医師として,被災された方々の思いを少しでも知ると共に,そうした取り組みを知り非常に尊敬する思いでした.
震災からの環境そして精神的な復興が一日も早く成ることを願います.今日はこれで…
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