久しぶりに内科関連の学会誌を読んでいて気になったので,復習してみることにしました.
学生時代変な読み方をしていたのを思い出しながら…(日内会誌101:3256-60),2012より
DIC(播種性血管内凝固)
概念
・種々の基礎疾患により全身性に凝固系の亢進を来たす
⇒微小血管に血栓を形成して臓器障害から多臓器不全を引き起こす
⇒凝固因子や血小板の消費により出血傾向をきたす
・DICを引き起こしてた患者は血栓症状と出血症状を同時に呈する場合があり注意が必要である.
DICの基礎疾患
①感染症
②組織損傷:外傷・熱傷・手術
③血管性病変:大動脈瘤・解離・血管腫(Kasabach-Merritt症候群)・血管炎
④トキシン/免疫:毒物・薬物・輸血(溶血・大量輸血)・移植
⑤悪性腫瘍
⑥産科疾患:子癇・羊水塞栓・常位胎盤早期剥離
⑦その他:急性膵炎・劇症肝炎・低酸素・熱中症・悪性症候群・脂肪塞栓・横紋筋融解症
中でも産科DICは本当に怖かった印象があります.とにかく補充することが大切だと教わりました.
臨床症状と診断
主に3型に分類
〇凝固優位型
・凝固活性は高いが,それに見合う線溶の活性化が抑制されている状態
・微小血栓による循環・多臓器不全をきたしやすいが出血傾向は軽度
・敗血症に多い
〇均衡型
・凝固線溶のバランスが取れている
・初期には血栓傾向,進行すると出血傾向
・固形癌に多い.
〇線溶優位型
・凝固活性化の程度と比較して高度に線溶が活性化された状態で出血傾向が前面にでる
・臓器障害は軽度
・APLや大動脈瘤に合併したDICなどに多い.
診断基準
厚生省DIC診断基準(1988年)
こちらは最もポピュラーであるが,急性期の診断にはやや不向き.
急性期では下記の診断が使用されている.
急性期DIC診断基準(日本救急学会DIC特別委員会)
初期治療
・微小血栓形成を抑制する抗凝固療法
・出血を予防するための血小板・凝固因子の補充が治療の中心となる.
■ヘパリン
・ATと複合体を形成して抗凝固活性を示すためAT活性が低下している場合にはATを補充する.
・未分化ヘパリンが最も安価であるが,抗Ⅹa/抗トロンビン活性比が低分子量ヘパリンやダナパロイドナトリウムに比べ小さいため出血の副作用の頻度が高いため,後2者が推奨される.
・未分化ヘパリンは十得な出血を伴う場合,合併の可能性がある場合は禁忌
・ダナパロイドナトリウムは半減期が長いため2回/日の静注でよい
①低分子ヘパリン(ダルテパリンナトリウム):フラグミン75単位/kg/日+NSを24hで
②ダナパロイドナトリウム:1250単位/回を12hごと
■合成プロテアーゼ阻害薬
・AT非依存性の抗凝固活性を持つ.通常用いられる投与量では出血の副作用は少ない.
・適応:出血症状の強い場合,線溶亢進,AT活性低下例
①エフオーワイ:24-48㎎/kg/日+5%ブドウ糖液500mlなど
②フサン:2.4-4.8㎎/kg/日+5%ブドウ糖液500mlなど(高K血症に注意)
■遺伝子組み換えトロンボモジュリン製剤
・トロンビンと複合体を形成して,凝固阻止因子であるプロテインCを活性化
・第V因子と活性化第VⅢ因子を分解・不活化
⇒トロンビンの生成を阻害,抗凝固作用を呈する.
〇リコモジュリン380IU/kg+NS100mlを30分で投与(腎障害で減量)
ATを補充しなくても使用できる意味ではプロテアーゼ阻害薬,薬価面ではヘパリンでしょうか.
血液内科ではリコモジュリンを良く使っていました.
■補充療法
〇血小板輸血:
3-5万/μlが目標.10-15単位を2hで投与.
〇新鮮凍結血漿(FFP):
フィブリノゲン100-150㎎/dl以上が目標
1回あたり8-12㎎/kgのFFPを投与.3-5単位を2h程度で投与.
〇AT濃縮製剤:
AT活性が70%以下の症例に補充.
ノイアート・アンスロビン:1500単位/日を緩徐に静注または点滴で3日間投与.
久しぶりにDICについて考えました.急性期DICの基準については積極的に使っていく必要があると感じました.今日はこのあたりで…
救急疾患ならこの本.何度か読むけど忘れますね…
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